鴻上の知恵 - 鴻上尚史

活字が恋しくて、古本屋で1冊100円で購入。1991年頃から週刊誌に連載されたエッセイのようで、自分が結婚した時期とちょうど重なるイベント(湾岸戦争とか)が順々に登場するところに懐かしさと甘酸っぱさを感じた。コンピュータやゲームに対する著者の興味の強さを感じるたびに、オールナイトニッポンで著者が「デゼニーランド」などについて語っていたことを思い出した。

もっともひっかったフレーズは次のもの。

「毎日、九時間、それも二ヵ月弱、ケイコして、それで面白くならないなら、よっぽど才能がないか、バカです。」

耳の痛いコトバだ。バンドをやっていたときに、数週間から数ヶ月程度ではあるが、自分ができるだろう最大の努力をしていたつもりだけれど、得られる評価に納得できない時期があった。自分が自分に下した評価ではなく、自分以外による評価を気にしているあたりが何とも恥ずかしいが、人に物を見せようとする以上、他人の評価を気にすることの恥ずかしさに対して開き直ることは許して欲しいと思う。評価されるのは気持ち良いじゃん。

投入量の多少で出来が変わる、というのは間違いない。しかし、投入量だけでは超えることができない壁がいたるところにあるのが世の中でだと思う。はるかに少ない投入量ではるかに高いクオリティのものを提示されることは茶飯事だし、自らに寄せられる評価が投入量に見合っていないと思うことだって少なくない。自らが高い評価を望みすぎているのかもしれないが、それはそう望んでいる自分の素直な気持ちであって、あとは挫折するなり、気持ちを改めるなり、もっと投入を続けるなりするしかないのだろう。しんどいだろうとは思うけど。