罪と罰 ナニワ人生学 - 青木雄二

罪と罰―ナニワ人生学

ナニワ金融道」ほど世の中に大きな影響を与えた書物はそれほど多くないのではないかと思う。このマンガを読んだおかげで、不用意に連帯保証人になったり、手形を受け取って失敗したりすることを免れた人は少なくないのではないかと思う。逆に、このマンガのせいでおいしい思いをし逃した人も少なくないのではないかとも思うが。

その作者である青木雄二が身につけた人生の必勝法をオープンにする本がこの「罪と罰」だそうである(「まえがき」にそう書かれている)。例えば、パチンコで勝とうとするのではなく、パチンコ情報を売ることで儲けようとする方が成功できる、だそうである。なるほど、そうかもしれない。パチンコにも、儲けることにも、特段興味を持てない僕にとってはちょっと遠い世界の話ではあるが、僕の周囲にもそれと類する思考が役に立つ事柄がゴロゴロしているんだろう。得をしたい、という強い気持ちがあまりない、というか得をしたいと考えてしまう自分を浅ましく思ってしまう僕にとっては、「成功の秘訣」を論じる人の積極性はまぶしいばかりだ。

ツキや運についても述べられており、これについては言葉は違うがおおよそ僕の考えと同じものかもな、と思いながら読んだ。僕は運命を信じているし、フォース(スター・ウォーズのあれ)の存在も信じている。世の中の動きはビッグバン以来続いている素粒子のビリヤードテーブルであり(この考えはアイザック・アシモフの短編の影響)、ビッグバンの時点ですべて決まっているのだと思う。あとは、その動き(運命といっても良いし、フォースといっても良い)をいかに感じ、それを利用して生活するかだと思う(フォースに支配され、時にはそれを支配もする(オビワン・ケノービ談))。

ギャンブルや事業を適切なタイミングまで続け、潔く引くことができる能力は、運やツキや運命やフォースを感じる能力であると思う。あるいは、自分が運やツキや(以下略)を感じることができないということを知っている(無知の知だね、これは)ことによって、大成功はしないかもしれないけれど、大失敗もしない、と。