15.0 理想のダイス環境

ダイスは少なからぬウォーゲームにおいて使用される、とても手ごろな「乱数発生用具」です。最近、筆者は「ダイスのふり方」にょっと懲っているといいますか、ダイスをより効率的にふることでゲームをより迅速に、ストレスなく進めることができるのではないかと思っています。現時点においてはまだ「理想の方法」を見つけ出すことができていないのですが、東急ハンズやホームセンター、事務用品店などに出向くごとに「いい方法がないかな」とあれこれと物色を続けています。

ダイスをふる最も単純な方法は、ダイスをふるための道具や容器を何も使わないという選択でしょう。ゲームを持ち歩くだけでもそれなりの荷物がありますし、ゲームを広げるだけでもそれなりの場所を食ってしまうのですから、ダイスをふるための容器などを別に用意するというのが合理的ではないというのも一理あります。

ただしこの場合、ダイスがテーブルから落ちたり、何かの段差に引っかかって斜めに止まったりして、ダイスの目が不明確になったり、ふり直さなければならなくなる可能性は増えるのではないでしょうか。斜めに止まったダイスの目の解釈について議論したり、ダイスを振りなおしたりという作業が増えるのはゲーム時間を引き延ばしますので、これを予防するためにもダイスは何らかの容器の中などでふる方がよいように思います。

箱入りのゲームであれば、その箱の中にダイスをふるのは悪くない方法だと思います。実際、Avalon Hillのゲーム「Storm Over Arnhem」のように「ダイスはゲームの箱の中にふらなければならない」とルールに定めているゲームもありますが、ゲームマップを挟んで座っているプレイヤーがダイスを投げ入れるための場所として、ゲームの箱が適当なサイズであることは事実だと思います(ビッグゲームの深い箱はちょっと問題があるかもしれませんが)。また、ゲームとは別にわざわざダイス用の容器を用意しなくてもよい、という点でゲームの箱は便利です。

テーブルの上であれ、箱のなかであれ、平らな場所でダイスをふった場合、ダイスがまったく回転しないまま停止してしまうことがあります。これは「乱数発生用具」として改善されるべき点ではないかと思います。また箱の中とはいえ、あちこちに散らばって止まったダイスは、ダイスの目をみるときや、拾い上げるときなどにプレイヤーに幾分無駄な動きを要求するように思います。

陶器やプラスチックなどでできた、内側が湾曲しているドンブリや湯呑みの中にダイスを投げ入れる(いわゆる「チンチロリン」です)ことでこれらの問題は軽減できるように思います。これらの容器のなかでダイスは複数回バウンドした後、容器の中心あたりに集まって止まるのが普通ですので、ダイスの目をみるときも、拾い上げるときも非常にスムーズです。ただし、陶器は運搬中やプレイ中のちょっとした動作などで割れる可能性があるので、プラスチックなどの方がよいのかもしれません。

さらに追求を進めるならば、陶器やプラスチックの容器のなかでダイスをふる場合にダイスと容器が当たって生じる「音」を解消したくなります。プレイヤーたち以外誰もいない場所でプレイする分にはよいのかもしれませんが、他のプレイヤーや家族などがいる場所でプレイする場合、できれば不必要な音は出さずにプレイしたいと筆者は考えています(と言いつつ、ゲームの展開に応じて感嘆の声をあげながらプレイするのではありますが)。

また、不透明な容器の中でダイスをふる場合、その視認性の悪さも気になるところです。理想は「すべてのダイスが両プレイヤーによって一瞬にして確認できること」です。ダイスをふるごとに背伸びをして湯呑みの中を覗き込まなければならないのは、連続して何度もダイスをふらなければならないようなゲームにおいて、ゲーム時間とストレスを増大させることになると思うのです。

はじめにも述べたとおり、これらの問題点をすべてクリアするような方法を見つけることはできていません。

音を出さないことにこだわるならば、麻雀卓やカジノのクラップのようなビロード張り容器がよいのではないかと思います。宝石入れの内箱や、バックギャモンのダイスカップなどが応用できるはずです。フェルトやコルクを用いて自作するのもよいかもしれません。ただしこれらをドンブリ状に「内側が湾曲した形」にするのは難しいように思います。

音を抑える別のアプローチとして「音の出ない材質のダイスを用いる」ということも考えてよいかもしれません。ただ何度もふられるダイスの材質にやわらかい布やゴムなどを用いた場合、耐久性の側面から「乱数発生用具」としての適性に問題が出るのではないかと思います。

また、視認性にこだわるならば透明の容器というのも一案です。ガラスの器は破損した際に危険なのでアクリルなどのものになるでしょうが、これも音が生じるのを避けることができません。透明で、やわらかくて、容易に変形しない容器を作ることは不可能ではないでしょうが、簡単に手に入るものではないように思います。

現時点で筆者は、ゲーム会などの会場ではゲームの箱を使って、自宅では紙の箱の内側にフェルトを木工用ボンドで貼り付けたものを使ってダイスをふっています(自宅は家族がいるため、音を出したくないからです)。また、コンピュータに取り込んだ画像を使ってボードゲームをプレイするときは、MS-Exceに乱数を発生させています。

本来の目的はゲームをすることであるにも関わらず、徐々にダイスをふることそのものへの思いが大きくなってしまっているのが我ながら面白いです(笑)。引き続き「ダイス道」を極めていきたいと思います。