白いページ I - 開高健

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フィクションとノンフィクションの違いに関する記述は、「空中庭園」を読み終えたときの心象に関わるものがあり、非常に興味深かった(それ以外の記述も興味深いものばかりだったけれど)。フィクションは作者が大変な才能や努力が注入されて、存在していない何かが文章として実在するに至る過程があることをすっかり忘れていた。

とはいえ、書かれているものが作者の創作であるのか、見たものを書き写しただけなのかは、読み手にとってどうでもよいことである。SFなどのように明白なフィクションは、その世界の創造そのものに驚けるが、普通の日常を舞台にしたフィクションは、ちょっとした違和感に対しても読者が敏感に気づいてしまうことがあるかもしれないから、あまり報われない作業なのかもしれない。

特撮映画で、宇宙空間やら未知の世界を舞台にした視覚効果よりも、日常を舞台にした視覚効果の方がアラが見つかりやすいから制作が大変、というのに近い感覚か。

ただし、見たものを書き写すだけと軽く言ってはみたものの、開高健のノンフィクション描写の巧みさに触れると、見たものを書き写す技巧にどれほど個人差があるかを痛感させられるようにも思う。

Iというくらいだから、IIもあるのだろうか。このシリーズに限らず、開高健は引き続き読んでみたい。