猫のゆりかご - カート・ヴォネガット・ジュニア

猫のゆりかご

ヴォネガットの小説に触れたのは大学生の頃で、映画経由で「スローター・ハウス・ファイブ」を読んで、その後、他の小説も次々と(ただし文庫限定) 読んでいった。「猫のゆりかご」もその頃に初めて読んで、その後に1回くらいは再読したように思っていたのだけれど、今回読み直してみて、後半の話しを全然覚えていなかったところを見ると、最初に1回読んだだけだったのかもしれない。

もう少し、面白い話だと思っていた。

ボコノン教はとても面白い。アイス・ナインも秀逸なアイディアだと思う。でも、これらがうまく物語として出来上がっていないように感じた。もう少し何かが欲しい。主人公の情報が少ないこと(途中何度か、過去にもっと主人公について語られていることがないか探しにいってしまった)、主人公がバナナ共和国に出向く必然を読み取りきれなかったことなどが、不足を感じた大きな要因ではないかと思っている。イリアムからバナナ共和国が全然別の話みたいに見えた。

失礼な評価とは思うものの、今後に出てくる他の小説のためのアイディアや手法をたたえた習作ということになるのだろうか。ボコノン教とアイス・ナインの面白さは、そんなマイナスイメージをすべて払拭するくらいのパワーがあるとは思うのだけれど。