未来世紀ブラジル

未来世紀ブラジル

劇場公開されたとき以来2度目の鑑賞。「バトル・オブ・ブラジル」を読んで、無性に見たくなってしまった。学生時代(もう20年も前のことだ)に見たときとは随分違う印象を受けることになった。

以下、ネタバレ。

初めて見たとき以来、サムは現実の世界ではダメダメなので妄想に逃げ込んでいるという話だと思い込んでいたが、今回見直してみて、サムはそれなりにできる (職場に勝手にビデオを流したり、上司のミスを迅速にリカバーしたり)人物だったことに驚いた。できるんだけど世間一般で言う成功には興味がない、という設定は今の自分からするととても身近なものだ(大学生時代の、もうちょっと熱かった頃の僕には理解できなかったのかもしれない)。

逆に、それなりにできる人物であるサムが、夢の女性にそっくりな人を見つけて見境をなくしてしまうことに現実味を感じることができなかった。彼女を追いかけることがサムにとってそれほど重要である、という説明を僕が映画から読み取りきれなかっただけかもしれないが。

とはいえ、自分の欲求を妄想の中だけで満たす人を見せるだけでは映画として退屈だろうから、廃人にされちゃうというある意味究極ともいえる苦行の中でも妄想に逃げる、という設定は面白いものなのだろうとは思う。けれど、やっぱり劇中のサムの行動がしっくりこないというか、見ていて「あーあ、そんな無茶して」と思ってあきれてしまわざるを得ないのである。

それから、この映画のサントラはあまり好きではなかったのだけれど、今回見直してみて、「ブラジル」の全体が流れるのは最後だけであることに気づいた(確認はしていないけれど、そうなんじゃないかと思う)。劇中で流れる音楽は「ブラジル」の一部を用いて作られた別の曲ばかりで、「ブラジルっぽい曲」が手を変え品を変えて出てくるだけだ。これはすごい仕事だと思う。