バトル・オブ・ブラジル - ジャック・マシューズ

バトル・オブ・ブラジル

大学生の頃に銀座の近藤書店(懐かしすぎる)で購入して読んだもの。ページの間に桜の花びらが挟まっているところが何箇所かあったけれど、これは桜が満開の代々木公園でこの本を読んだときに挟まったものだろう。これまた懐かしい思い出。

誰かがいい思いをして、誰かが痛い目にあった痛快な話、と読み取ることは全然できなかった。いい思いをした人がいるとすれば著者かなぁ、と思ったくらい。未公開(?)の映画を無理矢理ロサンゼルス批評家賞のために担ぎ出して、極端に悪く言えば「この映画を見つけましたー」と得意になっているようにすら思えた。ちょっと気持ち悪い。

映画「ブラジル」が出来上がっていく過程を垣間見させてくれる点では面白いと思う。監督とプロデューサと出資者(なのかな? シド・シャインバーグのこと)のそれぞれが、自分の仕事をきっちりこなそうとしていることは痛いほど伝わってきて切なかった。

僕は何かを創造する才能がなくて、創造できる人たちに嫉妬を感じているからだろうけれど、創造したり表現したりする才能を持つ人の気持ちや行動ばかりが正当化されているように感じる場面をしばしば見るように感じている。例えば、音楽のライブで何か問題があったときに、見ている人たちが問答無用にPA さんや、現場のスタッフを糾弾してしまうときがあるように思う。映画にしても、監督さんやスタッフさんではなく、出資者だったり映画会社だったりを糾弾してしまう風潮ってあるのかなと想像した。

契約より10何分長くなっただけなのに、なぜ自分の映画を手放さなければならないのか、と怒ってしまうテリー・ギリアムに僕は感情移入できなかった。それが契約というものではないの?と思った。

シャインバーグとギリアムの間に入って奔走するアーノン・ミルチャンが一番自分に近い存在に思えた。